はじめに:事業を「広げる」ことの難しさ
変化のスピードがかつてないほど加速している現在、企業も個人も「どう成長すべきか?」という問いから逃れられません。
経営環境はグローバルで複雑化し、新規事業や既存事業の見直しがあらゆる業界で求められています。
そんなとき、頼りになるのがアンゾフの成長マトリクスです。
「このままのやり方で、売上は伸びるのか?」
「新しい市場に進出した方がいいのでは?」
「既存顧客に新商品を売った方がリスクが低いのか?」
事業を拡大しようとする経営者やマーケターにとって、「どの方向に進むべきか」は常に悩ましいテーマです。
アンゾフの成長マトリクスは、製品と市場という2軸から、事業の成長戦略を整理・検討するためのシンプルかつ強力なフレームワークです。
本記事では、このアンゾフの成長マトリクスの基本から活用法、さらには思考整理ツール「アイディア・レーン」での活用方法まで、実践的な視点で紹介します。
アンゾフの成長マトリクスとは?
アンゾフの成長マトリクスは、戦略的経営の父と呼ばれた経営学者「イゴール・アンゾフ」によって提唱されたフレームワークです。
▷ 2軸4象限で構成される
アンゾフのマトリクスは、以下の2つの軸で構成されます。
- 市場軸(既存市場 vs 新市場)
- 製品軸(既存製品 vs 新製品)
この2軸を組み合わせて、以下の4つの成長戦略が導かれます。
既存市場 | 新市場 | |
---|---|---|
既存製品 | 市場浸透戦略 | 新市場開拓戦略 |
新製品 | 新製品開発戦略 | 多角化戦略 |
それぞれの戦略には、異なるリスクと可能性が伴います。
各象限の戦略を具体的に理解する
① 市場浸透戦略(既存市場 × 既存製品)
今いる市場で、今ある製品をさらに多くの人に買ってもらう戦略です。
具体的には:
- 新規顧客の獲得(キャンペーンや広告)
- 顧客単価の引き上げ(クロスセル、アップセル)
- リピーター率の向上(リマインド施策)
これはリスクが比較的低く、短期的成果を出しやすい戦略です。
② 新市場開拓戦略(新市場 × 既存製品)
今ある製品を、新しい市場や顧客層に届ける戦略です。
具体的には:
- 海外展開や地域拡大
- 新しい顧客層(若年層、高齢層など)への訴求
- 新たな販売チャネルの開拓(EC、モバイルアプリ)
この戦略は、新規市場に対応するための市場理解とローカライズの工夫が重要になります。
③ 新製品開発戦略(既存市場 × 新製品)
既存顧客のニーズに応えるために、新しい商品・サービスを開発する戦略です。
具体的には:
- 顧客アンケートや行動データから商品改善
- サブスクリプション型などビジネスモデルの変更
- 周辺ニーズに応じた付帯サービスの開発
自社のブランドやチャネルを活用しやすいため、新市場開拓よりも管理しやすいケースが多いです。
④ 多角化戦略(新市場 × 新製品)
もっともリスクが高い一方、成功すれば大きな成長を見込めるのがこの戦略です。
具体的には:
- 異業種への参入(例:小売→教育)
- IT企業がリアル店舗を展開するなどの越境戦略
- ベンチャー企業の新規事業開発
この領域は不確実性が高いため、十分な検証と柔軟なピボットがカギとなります。
アンゾフマトリクスが役立つ3つのシーン
- 中長期の成長戦略を考えるとき
- どこにリソースを集中すべきかの判断がしやすくなります。
- 新規事業を立ち上げるとき
- 「今の顧客に新しい価値を届けるのか?」「全く新しい市場に挑むのか?」が明確になります。
- 会議や報告資料の整理
- 4象限に分けることで、チーム内での認識共有がスムーズになります。
アイディア・レーンで「アンゾフの成長マトリクス」を使うと何が変わる?
🧠 思考を一気に「視覚化」できる
もちろんアンゾフのマトリクスを紙やホワイトボードで考えることは出来ますが、一度書いた要素は編集しづらくなります。
Excel(スプレッドシート)を使うと4象限の表現は便利でも、セルをまたいだ要素間の関係性を表現したり、一度作った項目をドラッグ&ドロップで4象限内の思った位置に移動するのは以外とやりづらいもの。
アイディア・レーンならこれらの弱点が無いうえ、エリアごとに思考が区切られ、自然と整理されます。
🔗 アイディアを階層化・関連づけできる
各エリアにアイディアを並べるだけでなく、階層化がTABキー1つで出来ます。
階層化した要素(ツリー)を丸ごとドラッグ&ドロップで移動するといったことも簡単です。
さらに「このアイディアはこの戦略にもつながる」といった横断的な関係も「リレーション」機能で視覚化できます。
🧩 全体を俯瞰しながら、細部にも集中できる
キャンバスは自由にズームイン・アウトできるため、全体戦略を俯瞰しつつ、詳細に掘り下げるという両立が可能です。
実際のテンプレートと使い方
使い方
- テンプレートを開く
- 「アンゾフの成長マトリクス」テンプレートを開きます
- 4象限それぞれにアイディアを入力
- 既存市場×既存製品 → どんな打ち手があるか?
- 新市場×既存製品 → 新しいターゲット層は?
- リレーションで関連を可視化
- たとえば、「SNS施策」は既存顧客向けにも新市場向けにも効く可能性あり。
- グループ化や色分けで深掘り
- 同じ方向性のアイディアはグループ化し、戦略の軸を明確化。
✅ アンゾフの成長マトリクスを使いこなすポイント
1. 4象限を“選択肢”として明確に描く
アンゾフのマトリクスは単なる分類ではなく、「どの成長戦略を選ぶか」の意思決定の道具です。
- 市場浸透:既存市場 × 既存製品
- 製品開発:既存市場 × 新製品
- 市場開拓:新市場 × 既存製品
- 多角化:新市場 × 新製品
「今どこにいるか」ではなく「どこに向かうか」を示すことが重要です。
2. リスクの大きさを定量・定性で把握する
マトリクスは、リスクの大小を構造的に捉える道具でもあります。
- 市場浸透 → 最も低リスク
- 多角化 → 最も高リスク(特に「関連性のない多角化」)
このリスクを「競合数」「市場規模」「投資額」「未知数の多さ」などで評価し、戦略ごとの難易度と投資判断に活かします。
3. 既存資産・ケイパビリティとの整合性を確認する
特に多角化を検討する場合、自社の強み(ブランド、技術、流通網など)を活かせるかを必ずチェックしてください。
- 関連多角化であればシナジーが期待できるが、
- 無関連多角化は非常に高リスク(事業の失敗確率が高い)
4. 一つの象限だけに依存しない
複数の象限を並行的に検討するのが有効です。
- たとえば、「市場浸透で短期利益を得つつ、中長期では製品開発で差別化」など。
- 成長戦略は組み合わせることが可能です(特に中期経営計画などでは有効)。
5. 「市場」や「製品」の定義を曖昧にしない
「市場をどう定義するか」「製品とは何を指すか」は、分析の前提として最重要です。
- 市場の定義が広すぎると分析がぼやける
- 製品の定義が浅いと差別化や開発の方向性がずれる
実務では「ターゲット顧客」「価値提案」「利用シーン」などで具体化しましょう。
⚠️ アンゾフの成長マトリクスの落とし穴
1. 4象限が「戦略の優劣」ではないのに、誤解されやすい
多角化=高度な戦略、市場浸透=つまらない戦略、と誤認されがちですが、
あくまで「方向性とリスクの整理」であって、優劣ではありません。
2. 「市場=地理的な市場」だけと誤解しがち
「市場開拓」を“海外展開”だけと理解してしまうと誤用です。
- 「新市場」は新しい顧客セグメントや新たな用途・シーンを含みます。
- たとえば、BtoB製品をBtoCにも展開する、というのも立派な市場開拓です。
3. 数字や調査データと結びつけずに感覚で使ってしまう
アイデアベースで4象限を埋めるだけでは不十分です。
- 各戦略の市場規模
- 既存事業との収益性の比較
- 実現に必要な資源や期間
などを、ファクトに基づいて検討する必要があります。
4. 実行プランやKPIに落とし込まれないまま放置されがち
マトリクスを作って満足してしまうケースが多いです。
- 戦略を選定した後は、「どの部署が何を、いつまでに、どのように」実行するのか明文化しましょう。
- KPI(達成指標)を設定して、継続的に進捗を確認できるようにするのが重要です。
他フレームワークとどう組み合わせる?
アンゾフ単独でも効果的ですが、次のようなフレームと組み合わせるとさらに強力です。
- SWOT分析
→ 自社の強み・弱みと外部環境を明らかにしたうえで、成長の方向を選定
→ 関連記事:SWOT分析テンプレートの使い方 - PEST分析
→ 政治・経済・社会・技術の外部変化を見極めて、市場開拓・多角化のリスク判断に使う
→ 関連記事:PEST分析をアイディアレーンで活用する - 4P分析
→ 製品戦略を具体化する際に、マーケティング視点で補強
→ 関連記事:4P分析で売れる仕組みを整理する
おわりに:戦略の「型」を持とう
事業の成長には、無数のアイディアよりも、的を射たフレームワークが効くときがあります。
アンゾフの成長マトリクスは、その中でも特にシンプルでパワフル。
そこにアイディア・レーンの構造的な整理機能を掛け合わせれば、戦略策定が「直感から納得」へと変わります。
今すぐ始めよう:テンプレートで思考を加速
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