はじめに
ユーザー獲得コストが高騰し、機能差別化だけでは生き残れない時代——。
SaaSやモバイルアプリのグロースチームがこぞって指標に採用するのが「AARRR(アー)」モデル、別名「海賊指標」です。
ユーザーの行動を的確に分析し、改善していくことはビジネスの成長を左右する重要なポイントです。この記事では、AARRRモデルの概要から具体的な活用方法、効果的な使い方まで詳しく解説します。
AARRRモデルとはざっくり?
AARRRモデルは、ユーザーの行動を以下の5つの指標で分析する手法です。
- Acquisition(獲得):どのようにユーザーを獲得したか
- Activation(活性化):ユーザーがどのようにして価値を感じるようになったか
- Retention(継続):ユーザーがサービスを使い続けているか
- Referral(紹介):ユーザーが他者にサービスを薦めているか
- Revenue(収益):ユーザーがどのように収益を生み出しているか
これらの頭文字をとってAARRRと呼ばれ、ユーザー行動を体系的に把握しやすくなるため、多くのスタートアップやオンラインサービスで活用されています。
1. AARRRモデルの成り立ちと基本概念
AARRRモデルは、シリコンバレー発祥のグロースハック手法の一つで、ベンチャーキャピタル500 Startupsの創業者であるDave McClure(デイブ・マクルーア)氏が提唱したとされるフレームワークです。
従来のマーケティング手法が「ファネル(Funnel)」と呼ばれる顧客獲得段階を中心に設計されるのに対し、AARRRモデルは獲得後のユーザー体験にもフォーカスし、ビジネス成長を総合的に捉えます。
なぜこれが”海賊指標”?
AARRRモデルが海賊指標(Pirate Metrics)と呼ばれる理由は、モデル名の頭文字の並び「AARRR」が、海賊の掛け声「アー!(Arrr!)」に似ているからです。
ジョーク的なネーミングですが、Dave McClure(デイブ・マクルーア)氏自身がこの名称を用いて紹介したそうです。
AARRRモデルの基本概念
AARRRでは、ユーザーがサービスと接触してから収益化するまでの流れを以下の5つのフェーズに分解します。
- Acquisition(獲得)
ユーザーにサービスを知ってもらい、新規訪問や登録を促すステップ。検索エンジンやSNS広告、オーガニック検索(SEO)、口コミなど、多様な獲得チャネルを設計し、効率的にユーザーを集めます。 - Activation(活性化)
実際にサービスを使ってもらい、初回の成功体験を提供する段階です。オンボーディングフローや無料トライアルのフォローアップで、ユーザーに「使い続けたい」と思ってもらうことを目指します。 - Retention(継続)
登録したユーザーが継続的にサービスを利用し続けてもらう施策を指します。リマインドメールやプッシュ通知、コンテンツ更新などで利用頻度を維持・向上させ、ユーザー離脱を防ぎます。 - Referral(紹介)
現ユーザーがサービスを他の人に紹介してくれる段階です。友人紹介プログラムやSNSシェアを活用し、紹介による新規ユーザー獲得を促進します。 - Revenue(収益)
最終的にビジネスが利益を得るステージです。課金プランの設計やアップセル・クロスセルを通じて、LTV(顧客生涯価値)を最大化します。
この5段階を順に実施することで、どのステージでユーザーが離脱しているのかを明確化し、課題抽出と改善策の立案が可能になります。
2. なぜAARRRモデルなのか?活用メリット
2-1. 課題の可視化と施策の優先順位付けができる
従来のファネル型モデルでは「認知→興味→検討→購入」に重点が置かれますが、AARRRモデルでは獲得後の活性化や定着・紹介にも焦点が当たるため、サービスリリース後の成長戦略を全体的に俯瞰できます。
たとえば、月間の新規獲得数は順調でも、初回利用後の離脱率が高い場合には「Activation(活性化)」ステージの改善にリソースを集中すべきと判断できるため、施策の優先順位付けが容易になります。
AARRRはスタートアップやSaaSで良く使われるモデルと言われますが、それは「契約後の継続利用(Retention)とReferral(紹介)と収益化(Revenue)の重要性」が高いケースでの親和性が良いからです。
いわゆるライフタイムバリュー重視の構造にピッタリ合っています。
2-2. データドリブンな意思決定を後押し
AARRRモデルでは各指標(KPI)を数値化し、定点観測することが前提です。具体的には以下のような数値を管理します。
- Acquisition: 月間新規登録ユーザー数、広告クリック数、CPI(Cost Per Install)など
- Activation: 初回ログイン後のエンゲージメント率、チュートリアル完了率など
- Retention: 1週間後/1ヶ月後の継続率、デイリーアクティブユーザー数(DAU)など
- Referral: 紹介経由の新規登録数、紹介1件あたりの獲得コストなど
- Revenue: 月間売上、ARPU(ユーザーあたりの平均収益)、LTV、チャーンレートなど
これらを定量的に把握し、施策を実施することで、施策効果の検証が容易になり、どの施策が有効かを迅速に判断できます。感覚や経験則ではなく「データに基づく改善」が可能になります。
2-3. グロースハックの土台になる
AARRRモデルは、グロースハック組織における「エンジニア・デザイナー・マーケター」の共通言語として機能します。数値を可視化し、各フェーズでの課題をチーム全体で共有できるため、組織的なPDCAサイクルを高速で回せます。
アジャイル開発やリーンスタートアップとも親和性が高く、早期検証・改善を繰り返すことで、より効率的にサービスを成長させられます。
3. SaaS企業のマーケティング改善プロジェクト例
スタートアップSaaS(例:経理ツール)のAARRRを考えると、たとえば次のようなものになります。
Acquisition(集客)
- SEO記事:「フリーランス 経費 精算」
- 比較サイト経由の見込み流入
- Twitter運用(会計Tips連載)
Activation(初期体験)
- 初回ログインで3分でレポート自動生成
- チュートリアル完了率を60%→80%に改善
Retention(継続)
- 毎週「経費アラートメール」を自動送信
- 月1の改善点アンケートでアップデート通知
Referral(紹介)
- 「紹介でAmazonギフト券」キャンペーン
- 利用者インタビューを公開・拡散
Revenue(収益)
- 有料プランの特典強化
- 初月無料 → 30日後自動課金フローの確認
このようにAARRRに沿って思考を展開することで、重要な打ち手が整理され、効果的なアクションを定義できるようになります。
4. AAARモデルを素早く活用するには
AARRRに沿って状況を整理したり打ち手を考えることは、ツールを選ばず紙やExcelですぐに始められます。
ただ実践では次のようなつまずきが起こりがちではないでしょうか。
- 情報を階層化したり、離れた要素間の関係性を整理しづらい
- 一度書いた要素を変更したり移動したりしづらい
- AARRRの形式やサンプルをゼロから作るか、コピー元となるテンプレートを探さなければならない
思考整理ツール「アイディア・レーン」では、あらかじめAARRRモデルのテンプレートを用意しています。
無料ですぐに使っていただくことができます。
実際のテンプレートを見てみましょう。
テンプレートから新しいキャンバスを作成すると、すぐにファクトやアイディア、関係性をどんどん追加できます。
5. FAQ(よくある質問)
Q1. AARRRモデルに必要な数値データはどこから取得すればよいですか?
A1. Google AnalyticsやMixpanel、Amplitudeなどの分析ツールを使うことで、各フェーズのKPIを定量的に把握することができます。
Q2. モデルをカスタマイズする際に注意すべきポイントは?
A2. 縦軸(ステージ)や横軸(カテゴリ)を自社の組織やフェーズに合わせて調整する形となりますが、変更後は必ずチーム全員に周知し、同じフレームワーク認識を共有しましょう。
Q3. AARRRモデル以外のフレームワークテンプレートはどこで探せますか?
A3. フレームワーク一覧ページに多数のビジネスフレームワークテンプレートが掲載されています。SWOT分析や3C分析、PEST分析など多彩なテンプレートを無料で利用できます。
6. まとめ
AARRRは「数字」と「施策」を一本のストーリーに束ねるフレームワークです。
アイディア・レーンのテンプレートを使えば、そのストーリーを「誰でも読める地図」に変換できます。ファネルの壁を超えて施策が繋がり、学習サイクルが加速する体験を無料でお試しください。
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