ジョハリの窓(Johari Window)は、「自分から見た自分」と「他者から見た自分」のギャップを見える化する心理学フレームワークです。
自己分析、1on1、研修、チームビルディング…とさまざまな場面で使える一方、「使い方次第で逆効果にもなりうる」繊細なツールでもあります。
この記事では、ジョハリの窓の基本から活用シーンを網羅的に整理し、メリット・注意点・使いこなしのコツ・具体的な1on1の手順、ツールの選び方まで徹底的に解説します。
また思考整理ツール「アイディア・レーン(idea Lane)」に用意されたジョハリの窓テンプレートを使ってすぐ効果的に実践する方法も紹介します。
この記事でわかること
- ジョハリの窓の基本と、4つの窓それぞれの意味
- グループワーク・1on1・研修での具体的な進め方
- 心理的安全性を守りながら実施するための注意点とNG例
- 継続的に活用するためのツール選びと、無料テンプレートの使い方
この記事はこんな方におすすめです
- 自己分析やキャリアの棚卸しに、ジョハリの窓を活かしてみたい方
- 1on1や評価面談を「なんとなくの雑談」から一歩進めたい方
- チームや部署で、相互理解ワーク・合宿プログラムを企画している方
すぐ試してみたい方へ
この記事で紹介するワークは、すべて思考整理ツール「アイディア・レーン」のジョハリの窓テンプレートで実施できます。
ジョハリの窓とは?
ジョハリの窓はアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリー・インガムによって提唱されたモデルです。
その名の通り4つの窓を使い、自分と他者評価のギャップを可視化する手法です。
2つの軸で4つの窓
ジョハリの窓は、次の2つの軸から成り立ちます。
- 縦軸:自分が知っているか/知らないか
- 横軸:他人が知っているか/知らないか
この2軸(観点)を組み合わせることで、自己に関する情報を次の4つの窓に分類します。
ジョハリの4つの窓の意味
1. 開放の窓(オープンエリア)
自分も他人も知っている自分です。 例としては、次のような行動・特性が入ります。
- 時間や締切を守っている
- タスク管理ツールで進捗をこまめに更新している
- 困っているメンバーがいれば自分から声をかけてサポートする
- 議論が感情的になりそうな場面で、論点を整理し直す役割を担うことが多い
本人も周囲も共通認識を持っている領域で、ここを広げることが信頼関係の基盤になります。
2. 盲点の窓(ブラインドエリア)
自分は気づいていないが、他人は知っている自分です。 例えば、こんなフィードバックがここに入ります。
- ミーティングでの声が小さく、後ろの席からは聞き取りづらい
- 説明が早口になりがちで、初めて聞く人には内容が伝わりにくい
- チャットでの文章がそっけなく見え、冷たく感じられることがある
- 忙しいときに表情が硬くなり、話しかけづらい雰囲気になっている
本人に悪気はないのに、周囲にとっては困りごとになる部分です。 建設的なフィードバックを通じて、開放の窓に移していくのがポイントになります。
3. 秘密の窓(ファサードエリア)
自分だけが知っていて、他人には見せていない自分です。 具体的には、次のような本音や事情が含まれます。
- メンバーに頼るより、自分一人で抱え込んでしまう癖がある
- 実はプレゼンや人前で話すことに強い苦手意識がある
- チームにもっと貢献したいが、どこまで踏み込んで良いか迷っている
- 本当はプロジェクトマネジメントに挑戦したいと思っている
- 家族の事情で、長時間残業が続く働き方は長くは続けられないと感じている
これらは自己開示によって開放の窓へ移動し、相互理解を一気に進める可能性を持っている領域です。
4. 未知の窓(アンノウンエリア)
自分も他人も知らない、まだ発揮されていない可能性の領域です。
- ファシリテーションを体系的に学べば、会議運営の強みになるかもしれない
- 異なる職種のメンバーとコラボすることで、新しい発想が生まれる可能性
- プレッシャーの高い場面で、冷静さを保つ力が活かされるかもしれない
新しい経験やチャレンジを通じて、未知の窓に眠っている資質が開放の窓へと移動していきます。
ジョハリの窓が目指す状態
このフレームワークのゴールは単純で、「開放の窓を広げる」ことです。 そのために、
- 秘密の窓 → 開放の窓:自己開示
- 盲点の窓 → 開放の窓:フィードバックの受容
という2つの流れを、安心して対話できる場の中で回していきます。
ジョハリの窓の活用シーン
ジョハリの窓は、自己分析から組織開発まで幅広く使える汎用フレームワークです。
ここでは、代表的な活用シーンを「個人」「1on1」「チーム」「組織」「教育」「グローバル」「デジタル」のレイヤーで網羅的に整理します。
1. 個人の自己分析・セルフコーチング
目的:自分の強み・弱み・価値観・癖を客観視して、行動を変える土台をつくる。
- 自分で4つの窓に書き出す
- 開放の窓:自分も他人も知っている「いつもの自分」
- 秘密の窓:本音・不安・こだわり(まだ言えていないこと)
- 他者の視点が足りない分は、
- 過去にもらったフィードバック
- 360度評価のコメント
- 上司や同僚からの印象
キャリアの棚卸しや、転職前の自己分析、就活の自己PRづくりに特に向いています。 「まずは自分だけで粗く書き、その後1on1や友人との対話で盲点の窓を埋めていく」という二段階の使い方が現実的です。
2. 1on1(上司–部下/メンター–メンティ)
目的:評価ではなく「相互理解」にフォーカスした1on1にする。
- 開放の窓:お互いが認識している強み・貢献・課題
- 盲点の窓:伝えにくかった改善点、行動のクセ
- 秘密の窓:キャリアの希望、家庭事情、エネルギーの源
- 未知の窓:次に挑戦したい役割やプロジェクト
メリットは、
- 「評価される側」ではなく「一緒に良くする相棒」という関係に寄せられる
- 「何となく噛み合わない」の原因を見つけやすい
注意点として、評価と直結させすぎると本音が出なくなります。 「話したくないことは話さなくてよい」「ここで話したことは成長と相互理解のために使う」と先に宣言しておくことが非常に重要です。
3. チームビルディング・オンボーディング
目的:新チームや新メンバーを含むチームで、お互いの「見え方」を早めに共有する。
典型的な使い方:
- 新プロジェクト立ち上げ時に、
- 各メンバーが「開放の窓」に自覚している強み・得意領域を書いて共有
- 他メンバーが「あなたのここが助かっている」を付箋で追加 → 盲点の窓が見える
- 新入社員・中途入社のオンボーディングで、
- 新メンバーが「こういうときに力を発揮しやすい/消耗しやすい」を秘密の窓側に書く
- 既存メンバーがそれを踏まえて、役割や相談・サポートの仕組みを考える
これにより、早い段階で「この人はこういう価値観・スイッチを持っている」が共有されるので、役割分担や相談の仕方のミスマッチを減らせます。
4. フィードバック研修・リーダーシップ研修
目的:建設的なフィードバックのやり方・受け止め方を学ぶトレーニングとして使う。
研修の典型的な流れ:
- 先に「開放の窓」にポジティブな行動・強みを書き出す
- その後、「盲点の窓」に“もっと良くなるためのポイント”を書いてもらう
- フィードバックを渡す側・受け取る側で感情の動きを振り返る
学べることは、
- 人格ではなく「行動」にフォーカスする話し方
- 「いつも」ではなく「この場面では」と条件を絞る重要性
- 改善提案やサポートをセットにしたフィードバックの仕方
「ただのダメ出し会」にならないように、賞賛7:提案3くらいのバランスを意識して設計すると、研修として機能しやすくなります。
5. 組織開発・心理的安全性向上のワーク
目的:組織全体の「本音を言える度合い」「フィードバック文化」の現状を可視化する。
- 部署単位でジョハリの窓ワークをし、「開放の窓がどのくらい広いか」を感じてもらう
- 「秘密の窓が大きい理由は何か?」をチームで議論する
- 評価・査定への恐れ
- 上司への信頼不足
- 過去に本音を言って損をした経験 など
結果から、1on1の質の改善、上司層へのトレーニング、失敗共有の場づくりなど、組織開発の具体施策につなげていけます。
6. キャリア面談・タレントマネジメント
目的:評価とキャリアの話を、「本人の自己認識」と「組織の期待」をリンクさせて行う。
- 開放の窓:組織から見えている強み・成果を具体例とともに共有
- 秘密の窓:本人のキャリア志向・やりたいこと・制約条件を共有
- 未知の窓:新しいポジションやプロジェクトで活きそうな潜在能力を一緒に考える
これにより、「何となくこういう期待をしている」という曖昧さが減り、本人の希望と組織の期待の接点(スイートスポット)を探しやすくなります。
7. コーチング・カウンセリング・メンタルケア
目的:クライアントの自己理解を深め、行動変容のテーマ設定をサポートする。
- セッション中にジョハリの窓を書き出してもらい、「開放/秘密」の境界線を意識してもらう
- 話してもいいか迷っているテーマは秘密の窓にいったん置き、タイミングを見て扱う
クライアント自身が「何をどこまで話すか」を自覚的に選べるため、無理のないペースで深いテーマに入っていけます。
8. 教育現場:キャリア教育・クラス運営
目的:学生の自己理解とクラス内の人間関係づくりに役立てる。
- キャリア授業で、自己PRやエントリーシートを書く前に友人同士で強みを出し合う
- ジョハリの窓で「自分が思う長所」と「友人から見た長所」のギャップを可視化する
- 学期初めに「話題にしてOKな自分の情報」を開放の窓側に書いてシェアする
「自己肯定感」「他者理解」「多様性の尊重」をセットで学べる、現場で扱いやすい教材になります。
9. 異文化理解・グローバルチームでの活用
目的:国籍や文化が異なるメンバー同士の「暗黙の前提」を可視化する。
- 時間感覚(5分の遅刻までOKか、厳密か)
- 意見の言い方(率直に言う vs オブラートに包む)
- 上司への期待(指示してほしい vs 任せてほしい)
こうした「文化の当たり前」は秘密の窓や盲点の窓に溜まりやすいので、 「自国文化の当たり前」+「相手から見たその振る舞いの意味」をジョハリの窓で対比すると、摩擦要因を発見しやすくなります。
10. ピアレビュー・同僚間フィードバック
目的:同僚同士で、フラットに強み・改善点を伝え合う文化を育てる。
- 同じプロジェクトのメンバー同士で、お互いの強みカードを書き合う
- そのうえで「もっとこうなったらさらに良い」という観点で盲点の窓に1〜2枚だけ追加
横の関係ならではの気づきが得られますが、愚痴や不満のはけ口にしないために、賞賛多め・提案少なめの比率を意図的に設計しておくと安心です。
11. ワークショップ・合宿・オフサイトミーティング
目的:日常業務から一歩離れて、「人」にフォーカスした対話を深める。
- 合宿プログラムの一部として、戦略セッションとセットで実施
- 「ここで話したことは合宿の外には持ち出さない」「評価・査定には使わない」というルールを明示
これにより、仕事観や人生観レベルの話が出てきやすくなり、その後のプロジェクトでの遠慮や誤解を減らせます。
ジョハリの窓のメリットと、押さえておきたいデメリット・注意点
活用シーンを見てきたうえで、ここからはメリットと注意点を整理します。
「良い面」と「気をつけるべき点」をセットで理解しておくと、導入の設計がしやすくなります。
ジョハリの窓を使うメリット
- 自己理解が深まる 自分では「当たり前」と思っている行動が、実は周囲から高く評価されている強みだと気づける。
- 相互理解・信頼関係が強まる 強み・本音・事情を共有することで、「なぜその行動を取るのか」が分かり、誤解が減る。
- フィードバック文化の土台になる 盲点の窓を扱う過程で、建設的なフィードバックのやり方・受け止め方を練習できる。
- キャリア開発・配置のヒントになる 未知の窓に書かれた「やってみたい領域」や「伸ばしたい力」が、役割設計や配置転換の判断材料になる。
デメリット・注意点
1. 他者がいないと十分には機能しない
ジョハリの窓は、「他者からのフィードバック」と「自己開示」があって初めてフルに機能するフレームワークです。 完全にひとりだけでやると、盲点の窓・未知の窓は仮置きのままになりがちです。(自分が考えた仮説にとどまる)
2. 心理的安全性が低い場での実施は逆効果
秘密の窓には、キャリアや生活に関わるセンシティブな情報も含まれます。 心理的安全性が低い職場でこれを強制的に開示させようとすると、
- 「本音を話すと不利になる」と感じてしまう
- 組織への不信感や警戒心が高まる
- 建前だけが並ぶ形式的なワークになる
といったリスクがあります。 「話したくないことは話さなくてよい」という合意と、運営側の態度が極めて重要です。
3. ネガティブフィードバックの伝え方を誤るリスク
盲点の窓には、本人が気づいていない課題や短所も含まれます。 ここを乱暴に突くと関係が壊れます。
- 人格否定に聞こえる言い方(「あなたはいつも〜だ」など)
- 過去の不満を一気にぶつけるような伝え方
- 改善提案なしの「ダメ出し」だけ
事実+具体的な行動+相手への期待・サポートの三点セットで伝えるのが基本です。
4. 一度きりのワークで終わらせてしまう問題
ジョハリの窓は、本来「一度やって終わり」のための枠組みではありません。 人も組織も変化するので、半年〜1年に一度は見直し、
- 開放の窓に新しく増えた強み
- 新しく生まれた盲点
- 新しいチャレンジで見えてきた未知の窓
をアップデートしていく必要があります。
ジョハリの窓を使いこなす4つのコツ
ここからは、実際にジョハリの窓を回すときに「うまくいくチーム」と「微妙な空気で終わるチーム」を分けるポイントを4つに絞って紹介します。
コツ1:いきなり「深い秘密」から話さなくてよいと伝える
秘密の窓には重たいテーマも入りますが、最初から全部出す必要はありません。 まずは、
- 仕事上の価値観(スピード優先か品質優先か)
- 得意タスク・苦手タスク
- 期待されると嬉しい役割/しんどい役割
といったレベルから始めると、安全に自己開示の練習ができます。
コツ2:強み・感謝から始めて、改善点はその後に
盲点の窓の課題からいきなり入ると、防衛的になりやすくなります。 1on1でも研修でも、
- 開放の窓にある「強み」や、相手への感謝をしっかり言葉にする
- そのうえで、「もっと良くなるための改善点」として盲点の窓を扱う
という順番にすると、相手も「自分を否定された」と感じにくくなります。
コツ3:紙1枚で終わらせず、「行動レベル」まで落とし込む
付箋を貼って写真を撮って終わり…では、行動は変わりません。 ワークの最後に、
- 開放の窓を広げるために、次の1〜2週間で何をするか
- 盲点の窓について、どのようにフィードバックを継続的にもらうか
- 未知の窓に向けて、どんな小さなチャレンジを試すか
を「具体的なアクション」として1〜3個に絞って決めることが重要です。
コツ4:オンライン時代は「図解」と「履歴」が武器になる
リモートワークが当たり前になった今、オンラインでジョハリの窓を行う機会も増えています。 そのとき重要になるのが、
- 4つの窓を画面共有しながら一緒に見られること
- ワーク内容を後から見返せる形で残せること
4つの窓にわかりやすく素早く入力出来るツールがベストです。
また入力したテキストを自由に並べ替えたり、線で結んだり、階層化できると自由度が高く表現できるツールを選ぶとより便利です。
ジョハリの窓の進め方:1on1
次に、マネージャーとメンバーの1on1を例に、ジョハリの窓を使う場合の具体的なステップを整理します。
この記事の中心想定である「1on1で相互理解を深める」文脈にも直結する部分です。
ステップ1:目的とルールを共有する
最初に、ジョハリの窓をやる目的とルールを必ず言葉にします。
- 目的例:「お互いの強み・弱み・価値観を共有し、今後の協力の仕方を考えるため」
- ルール例:
- ここで話した内容は評価のためではなく、成長と相互理解のために使う
- 話したくないことは話さなくてよい
- 相手を傷つけるためのフィードバックは禁止
ステップ2:開放の窓(お互い知っている部分)を書き出す
次に、「自分も相手も知っている部分」から始めます。 ジョハリの窓テンプレートの「開放の窓」エリアに
- 時間や締切を守っている
- タスク管理ツールで進捗をこまめに更新している
- 困っているメンバーがいれば自分から声をかけてサポートする
- 議論が感情的になりそうな場面で、論点を整理し直す役割を担うことが多い
- 1on1で決めたアクションアイテムを次回までに実行してくる
といったカードを置いていきます。
「この関係にはすでにこれだけの信頼と貢献がある」という前提を共有したうえで、次のステップに進めます。
ステップ3:盲点の窓(周りだけが見えている部分)を対話しながら埋める
続いて、マネージャー側から「自分は気づいていないが、他人は知っている」部分をカードにしていきます。
例えば
- ミーティングでの声が小さいときは、後ろの席からは聞き取りづらい
- 説明が早口になるときがあり、初めて聞く人には内容が伝わりにくい
- チャットでの文章がそっけなく見え、冷たく感じられることがある
単なる「指摘」ではなく、「どんな場面でそう感じたか」「どんな工夫があり得るか」まで一緒に言語化します。
ステップ4:秘密の窓(自分だけが知っている部分)を、話せる範囲で共有
本人側から、「自分だけが知っていて、周りは知らない」部分を話せる範囲で出してもらいます。
- メンバーに頼るより、自分一人で抱え込んでしまう癖がある
- 実はプレゼンや人前で話すことに強い苦手意識がある
- 本当はプロジェクトマネジメントに挑戦したいと思っている
- 家族の事情で、長時間残業が続く働き方は長くは続けられないと感じている
ここで共有された内容は、マネージャーにとって「配慮すべき事情」と「成長のきっかけ」の宝庫です。
ステップ5:未知の窓(まだ誰も気づいていない可能性)からチャレンジを考える
最後に、「自分も他人もまだ気づいていない可能性」をカードにします。
- ファシリテーションを体系的に学べば、会議運営の強みになるかもしれない
- 異なる職種のメンバーとコラボすることで、新しい発想が生まれる可能性
- プレッシャーの高い場面で、冷静さを保つ力が活かされるかもしれない
その中から「まずはどれを試してみるか」を選び、1〜3個の具体アクションに落とし込みます。
ステップ6:半年〜1年ごとに見直す
一度作ったジョハリの窓は、そのままにせず、評価タイミングや期初の1on1などに合わせて見直します。
- 開放の窓に新たに増えた強みは何か
- 以前は秘密だったが、今は共有できるようになったことは何か
- 新しい経験から見えてきた未知の窓は何か
この“履歴”が、本人やチームの成長ストーリーそのものになります。
ジョハリの窓の進め方:グループワーク
ジョハリの窓の「少人数グループで、お互いの見え方を出し合うワーク」の進め方を紹介します。ここでは、3〜8人程度のグループで行う標準的なやり方をまとめます。
実施前に押さえておきたい前提条件
ジョハリの窓は、やり方よりも「場づくり」が成否を分けます。始める前に、次の点だけは必ず確認しておきましょう。
- 人数
- 3〜8人程度の少人数が目安(多すぎると一人ひとりの扱いが浅くなる)
- メンバー構成:
- いきなり評価者と被評価者だけで行わない
- ある程度、日頃から関わりのあるメンバーで行う
- 目的の共有:
- 査定や人事評価のためではなく、「自己理解と相互理解のため」に使うことを明言する
- ルールの合意:
- 話したくないことは話さなくてよい
- 人格をラベリングする言葉(「ダメ人間」「メンタル弱い」など)は使わない
- 「いつも」「みんな」ではなく、具体的な行動・場面にフォーカスする
この前提がないまま実施すると、「本音を言うと損をするワーク」として記憶されてしまい逆効果です。
進め方
1. 目的とルールを説明する
- 例:「お互いの強み・価値観・クセを知って、今後の協力の仕方を考えるために行います」
- ルール(自己開示は任意/評価には使わない/相手を傷つける言い方は禁止)を確認する
2. 自分に当てはまるキーワードを選ぶ
- 事前に用意した「性格・行動のキーワードリスト」から、参加者各自が「自分に当てはまる」と思うものを選ぶ
- 開放の窓・秘密の窓に置いていくイメージで、自分なりにざっくり分類しておく
3. 他者から見た自分のキーワードを書いてもらう
- 「あなたを見ていて、こういうところが強みだと感じる」「こうなるとさらに良さそう」という観点で、参加者同士でカードを書く
- ネガティブなラベルではなく、「行動+場面」がわかる表現を基本にする
4. 4つの窓に分類して眺める
- 自分が選んだキーワードと、他者からもらったキーワードを合わせて、
- 開放の窓:自他ともに認識している部分
- 盲点の窓:他者だけが見えている部分
- 秘密の窓:自分だけが知っている部分
- 未知の窓:これからの可能性
- に振り分ける
5. 気づきと今後のアクションを共有する
- 個人ワークで気づきをメモしてから、ペア・グループで共有する
- 最後に、「開放の窓を広げるために、次の1〜2週間で何をするか」を1〜3個だけ決める
この「基本形」を押さえておくと研修・合宿などの応用パターンも設計しやすくなります。
ワークで使いやすいキーワードの例
ジョハリの窓では、「明るい」「真面目」のような一語ラベルだけだと、人によって解釈がバラバラになりがちです。
なるべく 具体的な行動ベースの言葉 にしておくと、安全にフィードバックしやすくなります。
例えば、次のようなキーワードはそのままカードにしても使いやすい例です。
- 約束した締切をきちんと守る
- 進捗や問題点を、こまめに共有してくれる
- 初対面の人ともすぐ打ち解ける
- 相手の話を最後まで落ち着いて聞いてくれる
- 議論が散らかってきたときに、論点を整理し直してくれる
- 細かいミスや抜け漏れにすぐ気づく
- 新しいツールややり方を試すのが好き
- トラブル時でも感情的にならずに対処できる
- 周囲を巻き込みながら物事を進めるのが得意
- 場の空気が重くなったときに、雰囲気を和らげてくれる
- 長期的な視点で物事を考えるのが得意
- 変化や方針転換に柔軟に対応できる
- 教えるのが上手で、相手に合わせて説明の仕方を変えられる
- 「やりきる」責任感が強い
- 相手の感情に気づきやすく、配慮した行動がとれる
一方で、
- 「だらしない」「メンタルが弱い」「鈍い」
などのネガティブなレッテル貼りは基本的にカードには入れないようにします。
どうしても改善点を扱いたい場合は、
- 「締切が守れない」→「タスクが集中すると、締切調整の相談が遅れやすい」
- 「暗い」→「集中しているときは、話しかけづらい雰囲気になりやすい」
のように、行動+場面に言い換えるルールをチームで共有しておくと安全です。
ツールの選び方
次にジョハリの窓を実際に運用するうえで重要な「ツール選び」を整理します。
アナログ(紙・付箋)で行う場合
メリット:
- 準備が簡単で、誰でもすぐ実施できる
- 身体を動かしながら貼り替えるので、議論が活性化しやすい
- オフライン研修や合宿など、大人数でも扱いやすい
デメリット:
- ワーク後の内容が写真頼みになり、編集や追記がしづらい
- 個人情報を含むため、紙の保管・廃棄の管理が必要
- リモートメンバーが参加しにくい
表計算ソフト(Excel / Googleスプレッドシート)で行う場合
セルを4象限に区切ってジョハリの窓を表現する方法です。
- 最初に2軸・4窓の枠を作る必要性がある
- 各窓の中身を増やすときに、いちいち行をつかしないといけない
- 項目の階層化や、関係性(線で結ぶなど)を表現しにくい
「とりあえず形を作りたい」という段階には向きますが、その後の思考整理や対話のしやすさという観点では物足りないことも多いです。
思考整理ツール・ホワイトボードツールで行う場合
オンラインホワイトボードやマインドマップ、思考整理ツールは、ジョハリの窓と相性が良いです。 特に、
- カード単位でアイデアを追加・移動・削除できる
- カード同士を線で結び、関係性を表現できる
- 拡大・縮小して、全体像と詳細を行き来できる
といった機能を持つツールは、1on1や研修でも使いやすくなります。
アイディア・レーンとは?
アイディア・レーンは、テキストを並べて考えを整える思考整理ツールです。
- ジョハリの窓のテンプレートが用意されていてすぐ始められる
- 入力した項目の階層化・関連付け(線でつなぐ)などがしやすく見やすい
- ジョハリの窓以外にも、メリットデメリット表・時間管理マトリクス・SWOT・3C・PDCA・カスタマージャーニー・AISAS・AARRR 等様々なフレームワークが使える
といった強みがあり、無料でどなたでも使えます。(ブラウザで動くのでインストール不要)
ジョハリの窓テンプレート
アイディアレーンが提供する無料テンプレートがこちらです。
すぐに使えるテンプレート
テンプレートは現在すべて無料ですが、将来一部を有料パック化させて頂く可能性がございます。
なお、現時点で作成したデータはあなたのアカウントに保存されますので、テンプレートが有料化された後も、引き続き無料で使いいただけます。
アイディア・レーンの「ジョハリの窓テンプレート」の説明
ジョハリの窓テンプレートでは、縦レーンと横レーンが次のように設定されています。
- 縦レーン
- 自分が知っている
- 自分は気づいていない
- 横レーン
- 他人が知っている
- 他人が知らない
各エリアには、
- 時間や締切を守っている
- タスク管理ツールで進捗をこまめに更新している
- ミーティングでの声が小さく、後ろの席からは聞き取りづらい
- 実はプレゼンや人前で話すことに強い苦手意識がある
- ファシリテーションを体系的に学べば、会議運営の強みになるかもしれない
といった具体的なサンプルカードが入っており、
「ゼロから何を書くか考える」のではなく、自分の状況に合わせて書き換えるだけでワークを始められるようになっています。
ジョハリの窓に関するQ&A(FAQ)
- ジョハリの窓は1on1以外でも使えますか?
-
はい、使えます。 1on1は相性の良い場面のひとつですが、次のような場でも活用されています。
- 新チーム立ち上げ時のキックオフ・合宿
- 部門横断プロジェクトでの相互理解ワーク
- 若手研修・リーダーシップ研修の一環
- キャリア教育・就活支援のワーク
- ネガティブなフィードバックはどこまで伝えるべきですか?
-
「相手を傷つけるため」のフィードバックはNGですが、「一緒に良くするため」のフィードバックなら扱う価値があります。
- 人格ではなく、具体的な行動にフォーカスする
- 1つの事例だけで「いつも〜だ」と決めつけない
- 改善やサポートの提案とセットにする
不安がある場合は、まずポジティブなフィードバックをしっかり伝えたうえで、
「もっと良くするために一つだけ提案したいことがある」という形にするとスムーズです。 - 何から始めればよいですか?
-
もしまだツールをお使いでなければ、まずはアイディア・レーンに登録し、ジョハリの窓テンプレートを開いてみてください。
- 最初は自分一人で「開放の窓」「秘密の窓」を埋めてみる
- 信頼できる1人の同僚や上司と共有して、1on1で「盲点の窓」を一緒に書き込んでみる
この2ステップだけでも、これまで見えていなかった自分の輪郭が、かなりはっきりしてきます。
「なんとなくモヤモヤする1on1」から卒業し、「お互いにとって意味のある1on1」に変えていきたい方は、ぜひ一度試してみてください。
外部の参考記事:
- ジョハリの窓 – Wikipedia
- ジョハリの窓とは?意味とやり方や4つの窓について(HRBrain) ジョハリの窓を学ぶのにおすすめの書籍などが紹介されています
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